さて狐《きつね》は、うまく人間の子どもにばけて、しりきれぞうりを、ひたひたとひきずりながら、村へゆきました。そして、しゅびよく油《あぶら》を一|合《ごう》かいました。
かえりに狐《きつね》が、月夜のなたねばたけのなかを歩いていますと、たいへんよいにおいがします。気がついてみれば、それは買ってきた油のにおいでありました。
「すこしぐらいは、よいだろう。」
といって、狐《きつね》はぺろりと油をなめました。これはまたなんというおいしいものでしょう。
狐《きつね》はしばらくすると、またがまんができなくなりました。
「すこしぐらいはよいだろう。わたしの舌《した》は大きくない。」
といって、またぺろりとなめました。
しばらくしてまたぺろり。
狐《きつね》の舌《した》は小さいので、ぺろりとなめてもわずかなことです。しかし、ぺろりぺろりがなんどもかさなれば、一|合《ごう》の油《あぶら》もなくなってしまいます。
こうして、山につくまでに、狐《きつね》は油をすっかりなめてしまい、もってかえったのは、からのとくりだけでした。
待っていた鹿《しか》や猿《さる》や狼《おおかみ》は、からのとくりを
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