み[#「のみ」に傍点]を持って、大理石を切り、それをだんだんつみかさねていきました。巨男《おおおとこ》は、仕事をしているときでもあの白鳥を背《せ》にとまらしていました。白鳥もおとなしくとまっていました。巨男《おおおとこ》は、つちをふりながらちょうど人間にいうように白鳥にいいました。
「お前は、いったいどうしたら涙《なみだ》を流すのか? お前はいつ涙《なみだ》を流すのか? お前は涙《なみだ》を流さなくては、いつまでたっても、お姫《ひめ》さまにはなれないのだよ、私はお前がかわいそうだ。だから早く美しいもとのお姫様《ひめさま》にかえってくれ。」
 そんなときには、白鳥は首をたれて巨男《おおおとこ》の話を聞いていましたが、涙《なみだ》を流したことはありませんでした。
 巨男《おおおとこ》の仕事は、どんどん進んでいきました。夜ふけでも、つみ上げられた塔《とう》の上から、つちの音が都《みやこ》の空にひびきました。都の人びとは、ねる前に、きっと窓《まど》をあけて巨男《おおおとこ》の働いている塔《とう》の上をみました。そこには、星と同じような灯《ひ》の光が、またたいていたんです。
 三月もたつと、巨男《おおおとこ》がとってきた大理石はつきてしまいました。塔《とう》の高さは宮殿《きゅうでん》のどの建物《たてもの》よりも高くなりました。それでも、王様は、それでよいとはおっしゃいませんでした。そこで、巨男《おおおとこ》はふたたび南方へ旅立ちました。長い鎖《くさり》をひきずって、白鳥をつれ、巨男《おおおとこ》は広い広い沙漠《さばく》をくる日もくる日も歩いていきました。巨男《おおおとこ》は、また大きな大理石を三つもらって都《みやこ》に帰りました。すぐその日からつちとのみ[#「のみ」に傍点]をとってそれを切りはじめました。
 塔《とう》はますます高くなりましたよ。
 空がくもって星がみられない夜でも、巨男《おおおとこ》の灯《ひ》はたった一つの星のようにポツンとうかび出ていました。

 それは、すこし風のつよい宵《よい》でした。都《みやこ》の人びとは、窓《まど》から塔《とう》の上の灯《ひ》をあおいでみました。灯《ひ》は風のために、ゆらゆらゆれていました。人びとはそのとき、はじめて巨男《おおおとこ》がかわいそうになりました。王様も窓《まど》から顔をお出しになって、塔《とう》の上をみました。ごーごー
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