まほう》を教えました。けれど、その魔法《まほう》は、みな、人間を種々の鳥獣《ちょうじゅう》にかえるものでした。
そのうちに、魔女《まじょ》はますます弱って、もう死にそうになりました。このときに、魔法《まほう》をとく法《ほう》を聞いておかねば、あの白鳥は、いつまでたっても、お姫様《ひめさま》にかえれないと思ったものですから、巨男《おおおとこ》は、魔女の枕《まくら》もとによって、
「いままで、お母さんは人間を種々の鳥獣《ちょうじゅう》にかえる法を教えてくださいましたが、まだ、魔法《まほう》をとくことを教えてくれません。どうか教えてください。」とたのみました。
「では、教えましょう。」と、魔女《まじょ》はいいましたが、もう息もきれぎれで、声は蚊《か》のようです。
「お母さん、はっきりいってください!」
巨男《おおおとこ》は、魔女《まじょ》の口もとへ耳をもっていきました。
「その鳥獣《ちょうじゅう》が、涙《なみだ》を流せば、もとの姿《すがた》にかえるよ……」これだけいうと、魔女《まじょ》は、頭をたれて死んでしまいましたよ。
巨男《おおおとこ》は、死んだ魔女《まじょ》を白い棺《かん》におさめて、椰子《やし》の木の根もとにうめました。そして、すぐ白鳥をつれて森の家を出ました。
巨男《おおおとこ》は、都《みやこ》へのぼろうと思いました。途中《とちゅう》でどうかして、白鳥に涙《なみだ》を流させようとしました。頭をたたいたり、お尻《しり》をつねったりしたのです。けれど白鳥は、けっして一|滴《てき》さえ涙《なみだ》を出しませんでした。ただ、悲しそうな声をあげたきりでした。おしまいには、かわいそうになって、巨男《おおおとこ》はいつのまにか白鳥に頬《ほお》ずり[#「ずり」に傍点]をしていました。そして巨男《おおおとこ》の眼《め》に涙《なみだ》がありました。
巨男《おおおとこ》は、夜となく昼となく歩き通して、家を出てから七日目に、めざす都《みやこ》に着きました。けれど、都の人びとは、巨男《おおおとこ》がおそろしい魔女《まじょ》の息子《むすこ》だということを知っていましたので、とおまわしに巨男《おおおとこ》を殺《ころ》そうと考えました。そこでひとりの男が総代《そうだい》となって、王様の住んでいられる宮殿《きゅうでん》へまいりました。そして、王様にこう申《もう》し上げたんです。
「王様
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