蟹のしょうばい
新美南吉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)蟹《かに》がいろいろ考えたあげく、
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蟹《かに》がいろいろ考えたあげく、とこやをはじめました。蟹《かに》の考えとしてはおおできでありました。
ところで、蟹《かに》は、
「とこやというしょうばいは、たいへんひまなものだな。」
と思いました。と申《もう》しますのは、ひとりもお客さんがこないからであります。
そこで、蟹《かに》のとこやさんは、はさみをもって海っぱたにやっていきました。そこにはたこがひるねをしていました。
「もしもし、たこさん。」
と蟹《かに》はよびかけました。
たこはめをさまして、
「なんだ。」
といいました。
「とこやですが、ごようはありませんか。」
「よくごらんよ。わたしの頭に毛があるかどうか。」
蟹《かに》はたこの頭をよくみました。なるほど毛はひとすじもなく、つるんこでありました。いくら蟹《かに》がじょうずなとこやでも、毛のない頭をかることはできません。
蟹《かに》は、そこで、山へやっていきました。山にはたぬきがひるねをしていました。
「もしもし、たぬきさん。」
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