》の方《ほう》へつれていかせました。
「旅《たび》で、みなさんお疲《つか》れじゃろ、わしはいまいい酒《さけ》をひとびん西《にし》の館《やかた》の太郎《たろう》どんからもらったので、月《つき》を見《み》ながら縁側《えんがわ》でやろうとしていたのじゃ。いいとこへみなさんこられた。ひとつつきあいなされ。」
 ひとの善《よ》い老人《ろうじん》はそういって、五|人《にん》の盗人《ぬすびと》を縁側《えんがわ》につれていきました。
 そこで酒《さけ》をのみはじめましたが、五|人《にん》の盗人《ぬすびと》と一人《ひとり》の村役人《むらやくにん》はすっかり、くつろいで、十|年《ねん》もまえからの知《し》り合《あ》いのように、ゆかいに笑《わら》ったり話《はな》したりしたのでありました。
 するとまた、盗人《ぬすびと》のかしらはじぶんの眼《め》が涙《なみだ》をこぼしていることに気《き》がつきました。それを見《み》た老人《ろうじん》の役人《やくにん》は、
「おまえさんは泣《な》き上戸《じょうご》と見《み》える。わしは笑《わら》い上戸《じょうご》で、泣《な》いている人《ひと》を見《み》るとよけい笑《わら》えて来
前へ 次へ
全31ページ中26ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
新美 南吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング