のら犬
新美南吉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)常念御坊《じょうねんごぼう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一、二|丁《ちょう》
[#]:入力者注 主に外字の注記や傍点の位置の指定
(例)やぶ[#「やぶ」に傍点]
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一
常念御坊《じょうねんごぼう》は、碁《ご》がなによりもすきでした。きょうも、となり村の檀家《だんか》へ法事《ほうじ》でよばれてきて、お昼すぎから碁《ご》をうちつづけ、日がかげってきたので、びっくりしてこしをあげました。
「まあ、いいじゃありませんか。これからでは、とちゅうで夜になってしまいます。今夜は、とまっていらっしゃいましよ。」
と、ひきとめられました。
「でも、小僧《こぞう》がひとりで、さびしがりますから。さいわいに風もございませんので。」
と、おまんじゅうのつつみをもらって、かえっていきました。
常念御坊《じょうねんごぼう》は歩きながらも、碁《ご》のことばかり、考えつづけていました。さっきのいちばんしまいの、あすこのあの手はまずかった。むこうがああきた、そこであすこをパチンとおさえ
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