ごん狐
新美南吉

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)私《わたし》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)しだ[#「しだ」に傍点]の一ぱいしげった
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       一

 これは、私《わたし》が小さいときに、村の茂平《もへい》というおじいさんからきいたお話です。
 むかしは、私たちの村のちかくの、中山《なかやま》というところに小さなお城があって、中山さまというおとのさまが、おられたそうです。
 その中山から、少しはなれた山の中に、「ごん狐《ぎつね》」という狐がいました。ごんは、一人《ひとり》ぼっちの小狐で、しだ[#「しだ」に傍点]の一ぱいしげった森の中に穴をほって住んでいました。そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出てきて、いたずらばかりしました。はたけへ入って芋をほりちらしたり、菜種《なたね》がら[#「がら」に傍点]の、ほしてあるのへ火をつけたり、百姓家《ひゃくしょうや》の裏手につるしてあるとんがらしをむしりとって、いったり、いろんなことをしました。
 或《ある》秋《あき》のことでした。二、三日雨がふりつづいたその間《あいだ》、
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