なみ》の谷《たに》も鳴《な》るぞ。ほれ、あそこの村《むら》もここの村《むら》も鳴《な》るぞ。」
ちょうどそのとき、ラジオのニュースで、きょうも我《わ》が荒鷲《あらわし》が敵《てき》の○○飛行場《ひこうじょう》を猛爆《もうばく》して多大《ただい》の戦果《せんか》を収《おさ》めたことを報《ほう》じた。
僕《ぼく》の眼《め》には、爆撃機《ばくげきき》の腹《はら》から、ばらばらと落《お》ちてゆく黒《くろ》い爆弾《ばくだん》のすがたがうつった。
「ごんごろ鐘《がね》もあの爆弾《ばくだん》になるんだねえ。あの古《ふる》ぼけた鐘《かね》が、むくりむくりとした、ぴかぴかひかった、新《あたら》しい爆弾《ばくだん》になるんだね。」
と僕《ぼく》がいうと、休暇《きゅうか》で帰《かえ》って来《き》ている兄《にい》さんが、
「うん、そうだ。何《なん》でもそうだよ。古《ふる》いものはむくりむくりと新《あたら》しいものに生《う》まれかわって、はじめて活動《かつどう》するのだ。」
といった。兄《にい》さんはいつもむつかしいことをいうので、たいてい僕《ぼく》にはよくわからないのだが、この言葉《ことば》は半分《はんぶん》ぐらいはわかるような気《き》がした。古《ふる》いものは新《あたら》しいものに生《う》まれかわって、はじめて役立《やくだ》つということに違《ちが》いない。
底本:「少年少女日本文学館第十五巻 ごんぎつね・夕鶴」講談社
1986(昭和61)年4月18日第1刷発行
1993(平成5)年2月25日第13刷発行
入力:田浦亜矢子
校正:もりみつじゅんじ
1999年10月25日公開
2009年1月27日修正
青空文庫作成ファイル:
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