を一まきして次の柱にわたされ、こうしてどこまでもつづいていた。
注意してよく見ると、ところどころの柱から黒い綱が二本ずつだるまさんの頭のところで別れて、家の軒端《のきば》につながれているのであった。
「ヘへえ、電気とやらいうもんはあかり[#「あかり」に傍点]がともるもんかと思ったら、これはまるで綱じゃねえか。雀や燕《つばめ》のええ休み場というもんよ」
と巳之助が一人であざわらいながら、知合いの甘酒屋にはいってゆくと、いつも土間《どま》のまん中の飯台の上に吊してあった大きなランプが、横の壁の辺に取りかたづけられて、あとにはそのランプをずっと小さくしたような、石油入れのついていない、変なかっこうのランプが、丈夫《じょうぶ》そうな綱で天井からぶらさげられてあった。
「何だやい、変なものを吊したじゃねえか。あのランプはどこか悪くでもなったかやい」
と巳之助はきいた。すると甘酒屋が、
「ありゃ、こんどひけた電気というもんだ。火事の心配がのうて、明かるうて、マッチはいらぬし、なかなか便利なもんだ」
と答えた。
「ヘッ、へんてこれん[#「へんてこれん」に傍点]なものをぶらさげたもんよ。これじゃ甘酒
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