立てて何にするのだろう、と思いながら少し先にゆくと、また道ばたに同じような高い柱が立っていて、それには雀《すずめ》が腕木にとまって鳴いていた。
この奇妙な高い柱は五十|米《メートル》ぐらい間をおいては、道のわきに立っていた。
巳之助はついに、ひなたでうどんを乾《ほ》している人にきいてみた。すると、うどんやは「電気とやらいうもんが今度ひけるだげな。そいでもう、ランプはいらんようになるだげな」と答えた。
巳之助にはよくのみこめなかった。電気のことなどまるで知らなかったからだ。ランプの代りになるものらしいのだが、そうとすれば、電気というものはあかり[#「あかり」に傍点]にちがいあるまい。あかり[#「あかり」に傍点]なら、家の中にともせばいいわけで、何もあんなとてつもない柱を道のくろに何本もおっ立てることはないじゃないかと、巳之助は思ったのである。
それから一月《ひとつき》ほどたって、巳之助がまた大野へ行くと、この間立てられた道のはたの太い柱には、黒い綱のようなものが数本わたされてあった。黒い綱は、柱の腕木にのっているだるまさんの頭を一まきして次の柱へわたされ、そこでまただるまさんの頭
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