鞋を買ってもらいに行くと、雑貨屋の婆さんはにこにこしながら、こりゃたいへん便利で明かるうて、夜でもお客がよう来てくれるし、釣銭《つりせん》をまちがえることもないので、気に入ったから買いましょう、といった。その上、ランプのよいことがはじめてわかった村人から、もう三つも注文のあったことを巳之助にきかしてくれた。巳之助はとびたつように喜んだ。
そこで雑貨屋の婆さんからランプの代と草鞋の代を受けとると、すぐその足で、走るようにして大野へいった。そしてランプ屋の主人にわけを話して、足りないところは貸してもらい、三つのランプを買って来て、注文した人に売った。
これから巳之助のしょうばいははやって来た。
はじめは注文をうけただけ大野へ買いにいっていたが、少し金がたまると、注文はなくてもたくさん買いこんで来た。
そして今はもう、よその家の走り使いや子守をすることはやめて、ただランプを売るしょうばいだけにうちこんだ。物干台《ものほしだい》のようなわく[#「わく」に傍点]のついた車をしたてて、それにランプやほやなどをいっぱい吊し、ガラスの触れあう涼しい音をさせながら、巳之助は自分の村や附近の村々へ
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