の下から発見した半巾《ハンカチーフ》ね、あれには手紙を包んであった皺が瞭然《はっきり》残って、しかもナフタリンの匂《におい》が沁《し》みこんで居た、箪笥の中にあったものたることは疑われない、然りとすれば脅迫状の主と、娘とが常から通信をやっていたことになるね、不届な郵便屋だ、ここに捕縛して来た、こりゃ君、女学校で用《つか》う手芸用の箆《へら》だよ、此奴が裏の塀の根元を掘て手紙を埋めたり掘出したりした奴さ、塀の内外《うちそと》は夜なら誰にも知れず一仕事やれるからね、脅迫状にも細かく折った筋が残っていたね覚えて居るだろう、
それで近頃衣類を新しく調《こし》らえた形跡がなくて、通信用の書簡箋を鑑定するに及んで物資の窮乏を感ぜない、まア資産階級の仕業《しごと》と判った。君女は吾々と違って洋服一点張りじゃいけないのだ、これから時候は寒さに向って、加之《しかのみならず》常着《ふだんぎ》から総《すべ》てを新調して世帯道具を揃えることは中々容易じゃないよ、
公然|単独《ひとり》で墓参に行くと、そこには必ず誰か彼女を待って居るものがあった、所謂誘拐される四日前も二人は遇《あっ》た、そして女は降りかかる
前へ
次へ
全19ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
山下 利三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング