著書《ちょしょ》の坊間《ぼうかん》に現わるるもの甚《はなは》だ多し。その書の多き、随《したがっ》て誤聞《ごぶん》謬伝《びゅうでん》もまた少なからず。殊《こと》に旧政府時代の外交《がいこう》は内治に関係《かんけい》することもっとも重大《じゅうだい》にして、我国人の記念《きねん》に存《そん》すべきものもっとも多きにもかかわらず、今日すでにその事実《じじつ》を失うは識者の常に遺憾《いかん》とするところなりしに、この書|一度《ひとた》び世に出《い》でてより、天下《てんか》後世《こうせい》の史家《しか》をしてその拠《よ》るところを確実《かくじつ》にし、自《みず》から誤《あやま》りまた人を誤るの憂《うれい》を免《まぬ》かれしむるに足《た》るべし。
先生、諭吉に序文《じょぶん》を命《めい》ず。諭吉は年来《ねんらい》他人の書に序《じょ》するを好《この》まずして一切その需《もとめ》を謝絶《しゃぜつ》するの例なれども、諭吉の先生における一|身上《しんじょう》の関係《かんけい》浅《あさ》からずして旧恩《きゅうおん》の忘るべからざるものあり。よってその関係《かんけい》の大概《たいがい》を記《しる》して序文に
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