ろうぜき》名状《めいじょう》すべからず。その中には多少|時勢《じせい》に通じたるものもあらんなれども、多数に無勢《ぶぜい》、一般の挙動はかくのごとくにして、局外より眺《なが》むるときは、ただこれ攘夷《じょうい》一偏の壮士輩《そうしはい》と認めざるを得ず。然《しか》らば幕府の内情は如何《いかん》というに攘夷論《じょういろん》の盛《さかん》なるは当時の諸藩《しょはん》に譲《ゆず》らず、否《い》な徳川を一藩として見れば諸藩中のもっとも強硬《きょうこう》なる攘夷《じょうい》藩というも可なる程《ほど》なれども、ただ責任《せきにん》の局に在《あ》るが故《ゆえ》に、止《や》むを得ず外国人に接して表面《ひょうめん》に和親《わしん》を表したるのみ。内実は飽《あ》くまでも鎖攘主義《さじょうしゅぎ》にして、ひたすら外人を遠《とお》ざけんとしたるその一例をいえば、品川《しながわ》に無益《むえき》の砲台《ほうだい》など築《きず》きたるその上に、更《さ》らに兵庫《ひょうご》の和田岬《わだみさき》に新砲台の建築《けんちく》を命じたるその命を受けて築造《ちくぞう》に従事せしはすなわち勝氏《かつし》にして、その目的《も
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