政府と対立《たいりつ》して恰《あたか》も両政府の争《あらそい》なれば、外国人はおのおのその認《みと》むるところの政府に左袒《さたん》して干渉《かんしょう》の端《たん》を開くの恐《おそ》れありしといわんか。外人の眼を以て見《み》るときは、戊辰《ぼしん》における薩長人《さっちょうじん》の挙動《きょどう》と十年における西郷の挙動と何の選《えら》むところあらんや。等《ひと》しく時の政府に反抗《はんこう》したるものにして、若《も》しも西郷が志《こころざし》を得て実際《じっさい》に新政府を組織《そしき》したらんには、これを認むることなお維新政府《いしんせいふ》を認めたると同様なりしならんのみ。内乱の性質《せいしつ》如何《いかん》は以て干渉の有無《うむ》を判断《はんだん》するの標準《ひょうじゅん》とするに足《た》らざるなり。
 そもそも幕末の時に当りて上方《かみがた》の辺に出没《しゅつぼつ》したるいわゆる勤王有志家《きんのうゆうしか》の挙動を見れば、家を焼《や》くものあり人を殺《ころ》すものあり、或は足利《あしかが》三代の木像《もくぞう》の首を斬《き》りこれを梟《きょう》するなど、乱暴狼籍《らんぼう
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