にその憂慮の然《しか》るべき道理《どうり》を見るなり云々《うんぬん》。当時《とうじ》幕府の進歩派|小栗上野介《おぐりこうずけのすけ》の輩《はい》のごときは仏蘭西《フランス》に結びその力を仮《か》りて以て幕府統一の政《まつりごと》をなさんと欲《ほっ》し、薩長《さっちょう》は英国に倚《よ》りてこれに抗《こう》し互《たがい》に掎角《きかく》の勢《いきおい》をなせり。而《しこう》して露国またその虚《きょ》に乗《じょう》ぜんとす。その危機《きき》実に一髪《いっぱつ》と謂《い》わざるべからず。若《も》し幕府にして戦端《せんたん》を開かば、その底止《ていし》するところ何《いずれ》の辺《へん》に在るべき。これ勝伯が一|身《しん》を以て万死《ばんし》の途に馳駆《ちく》し、その危局《ききょく》を拾収《しゅうしゅう》し、維新の大業を完成《かんせい》せしむるに余力を剰《あま》さざりし所以《ゆえん》にあらずや云々《うんぬん》」とは評論全篇の骨子《こっし》にして、論者がかかる推定《すいてい》より当時もっとも恐るべきの禍《わざわい》は外国の干渉《かんしょう》に在りとなし、東西|開戦《かいせん》せば日本国の存亡《そん
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