、更《さ》らに浜御殿《はまごてん》を占領《せんりょう》して此処《ここ》より大城に向て砲火《ほうか》を開き、江戸市街を焼打《やきうち》にすべし云々《うんぬん》とて、その戦略《せんりゃく》さえ公言《こうげん》して憚《はば》からざるは、以て虚喝《きょかつ》に外ならざるを知るべし。
されば米国人などは、一個人の殺害《さつがい》せられたるために三十五万|弗《ドル》の金額を要求するごとき不法《ふほう》の沙汰《さた》は未《いま》だかつて聞かざるところなり、砲撃《ほうげき》云々《うんぬん》は全く虚喝《きょかつ》に過《す》ぎざれば断じてその要求を拒絶《きょぜつ》すべし、たといこれを拒絶《きょぜつ》するも真実《しんじつ》国と国との開戦《かいせん》に至《いた》らざるは請合《うけあ》いなりとて頻《しき》りに拒絶論《きょぜつろん》を唱《とな》えたれども、幕府の当局者は彼の権幕《けんまく》に恐怖《きょうふ》して直《ただち》に償金《しょうきん》を払《はら》い渡《わた》したり。
この時、更《さ》らに奇怪《きかい》なりしは仏国公使の挙動《きょどう》にして本来《ほんらい》その事件には全く関係《かんけい》なきにかかわら
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