を、そこにすまわせ、朝《あさ》に夕《ゆう》にお経《きょう》をあげていただいて、海の底《そこ》にしずんだ人びとの霊《れい》をなぐさめました。
それからというもの、青《あお》い鬼火《おにび》も、戦争の物音《ものおと》も、舟をしずめる黒い影《かげ》も、あらわれなくなりました。しかしまだときどき、ふしぎなことがおこりました。平家の人びとの霊《れい》は、まだじゅうぶんには、なぐさめられなかったとみえます。つぎの物語《ものがたり》はこのふしぎなことのひとつであります。
二
そのころ赤間《あかま》ガ関《せき》に、法一《ほういち》というびわ[#「びわ」に傍点]法師《ほうし》がいました。この法師は生まれつきめくらでしたので、子どものときから、びわをならい、十二、三|才《さい》のころには師匠《ししょう》に負《ま》けないようになりました。そして、いまでは天才《てんさい》びわ法師《ほうし》としてだれでもその名を知っているようになりました。
さて、多くのびわ歌《うた》の中で、この法師がいちばんとくいだったのは、壇《だん》ノ浦《うら》合戦《かっせん》の一|曲《きょく》でありました。ひとたび法師
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