。どういうわけで、出ていくのか。わしは寺男《てらおとこ》にさんざんさがさせたのじゃ。いったいどこへいきなさるのだね。」
「これは申《もう》し上げられませぬ。てまえのかってな用事《ようじ》をたしにでかけたのです。どうもほかの時刻《じこく》では、つごうがわるいものですから。」
 法師はただそう答えました。
 お坊さんは、法師のようすがあまりへんなので、これはすこしあやしい、もしかしたら悪霊《あくりょう》にでもとりつかれたのかもしれない、と思って、それ以上《いじょう》は、ききただそうとしませんでした。そのかわり、ひとりの寺男に、ひそかに法師のようすを見はらせることにして、もし夜中にそとへでていくようなことがあったら、あとをつけろといいつけておきました。
 すると、はたしてその夜も、法師はびわ[#「びわ」に傍点]を持って、寺をひとり出ていきました。寺男はちょうちんに灯《ひ》をいれて、そのあとをつけていきました。その夜は、雨もよいの陰気《いんき》なくらい晩《ばん》でありました。しかし、めくらの法師は、まるで目あきのようにさっさと歩き、いつか年《とし》よりの寺男をあとに、くらがりの中へきえてしまい
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