あれと呼べば即ち光あり。人あれといへば即ち人あり。諸人何ぞこの大神を崇《あが》めざるや。何ぞ猥りに神威を疑ひ、大神の怒、天地滅尽、じゆいそぜらる[#「じゆいそぜらる」に傍点]の時来らむを恐れざるや。何ぞてしひりいないる[#「てしひりいないる」に傍点]を取り自ら己が身を打つて懺悔礼拝《ざんげらいはい》せざる。何ぞさんた[#「さんた」に傍点]、くるす[#「くるす」に傍点]を吻《す》ひて、偏《ひとへ》におらつしよ[#「おらつしよ」に傍点]を唱へざる。波羅葦増雲近づけり。祈りを上げよ。おおらつしよ[#「おおらつしよ」に傍点]、おおらつしよ[#「おおらつしよ」に傍点]、さんたまりや[#「さんたまりや」に傍点]。
[#ここから3字下げ]
伊留満高く金十字架を頭上に捧げ、ひたすらに聖頌を唱ふ。門内の楽曲、厳粛豊麗なる寺院楽律よりやうやう神秘奇峭なる近世的問題楽曲に移る。四下やうやうさわがしくなる。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
第一の人 あれ伴天連《ばてれん》が妖術を始めたぞ。
第二の人 何ぢや妖術ぢやてや。
[#ここから3字下げ]
舞台やうやく赤くかすみ来
前へ
次へ
全44ページ中32ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
木下 杢太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング