おんがく》(中世の宗教楽)。所化乗円提灯を翳して伊留満に迫る。
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乗円 伊留満あんとにゆす[#「あんとにゆす」に傍点]と申すは其方《そなた》か。
伊留満喜三郎 如何にも伊留満あんとにゆす[#「あんとにゆす」に傍点]は此方《このはう》ぢや。
乗円 咄、此|老狐《らうこ》、猥《みだ》りに愚民を誑《たぶ》らかし居るな。
伊留満喜三郎 何とて人を誑らかさうや。
乗円 然らば借問《しやもん》す。でいゆす[#「でいゆす」に傍点]天地を造りしとは真か。
伊留満喜三郎 説くにや及ぶ。
乗円 さらば其でいゆす[#「でいゆす」に傍点]をば誰が造りしぞ。
伊留満喜三郎 でいゆす[#「でいゆす」に傍点]こそは天地の唯一神《ゆゐいつしん》。誰も造りしものはおぢやらぬ。
乗円 は、は、でいゆす[#「でいゆす」に傍点]を造りしものが無うて、でいゆす[#「でいゆす」に傍点]能《よ》く天地万象を造りしとな。然らばでいゆす[#「でいゆす」に傍点]は即ち五塵《ごぢん》の塊《くわい》、五蘊《ごうん》の泉、憎愛簡択《ぞうあいかんたく》の源とこそ見ゆれ。
伊留
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