傍点]とを見付けたのも此路の傍であつた。ほととぎす[#「ほととぎす」に傍点]はその花瓣の斑《ふ》が普通のものとは異つてゐた。いづれも唯一株だけ生えてをり、その附近には同じ花を見なかつた。水の溜つた田のわきにはおほばたねつけばな[#「おほばたねつけばな」に傍点]の[#底本では誤って「の」にも傍点]聚落《しゆうらく》が有つた。おらんだせり[#「おらんだせり」に傍点]に似るこの十字花科植物の一種の風味有つて食ふに堪ふることは、今年始めて之を知つたのである。
さて、前に話した鹽はこれからいり用になるのである。この川に添うて、またかのすかんぽ[#「すかんぽ」に傍点]が簇生《ぞくせい》して居り、幼年の者しばしばそれを嗜《たしな》むのである。花の莖の太く短く、青女《あををんな》の前膊《ぜんぱく》の如き感じを與へるのが最も佳味であつた。その折れ口に鹽をつけて食ふと、一種の酸味と新鮮のにほひとが有る。柄の太い嫩葉《どんえふ》は鹽を振りまぜて兩掌の間に摩《も》んで食ふのである。緑色に染まつた手をば川の水で洗ふ。いたどり[#「いたどり」に傍点]もこの川の縁に生えてゐたがアスパラガスのやうに太く軟い莖は、
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