青白き夢
素木しづ
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)目蓋《まぶた》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、底本のページと行数)
(例)うとうと[#「うとうと」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ずん/\目の前に
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
この夜も、明けるのだと思った。
お葉は目を明けたまゝ、底深い海底でもきはめるやうに、灰色の天井を身ゆるぎもせず、見つめたまゝ、
『お母さん!』低く呼んだ。
淡黄色い、八燭の電気の光りのなかに、母親は重苦しくひそやかに動いて、ベッドのそばに手をかけた。
『苦しいのかい。水が呑みたい?』
お葉は、なほ天井を見つめたまゝ、何といってよいか、只悲しかった。
お母さんは、なんでも知ってゝ呉れる。私に解らない心をも、お母さんは知ってて呉れる。わたしは、只お母さんの声が聞きたかったのだ。動くのが見たかったのだ。
お葉は、なほ黙って居る。
『お前、足が痛むのかい。』
『いゝえ。』彼女は、はっきりと答へた。
『お母さん、今日も
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