」に傍点]と白く光っているのを見ていた。
 この天塩川は、なかなかの急流なので、普通のように櫓で船を漕いで渡ることは、出来ないのであった。太い強い針金をいく本も縄のように綯《な》って、河の両岸へ渡してある。そしてその針金の上を車が動くようになっていて、車に渡船がつながれると、船頭の一寸した手かげんで上手に、船が流されようとする力を応用して、彼方岸《むこうぎし》に一人でに行くようになっている。楯井さんは、いつもそれを不思議に面白く見ているのであった。
 楯井さんが渡船をのりすてゝ、山崎の家についた時は、せまい新開地のことであるから大勢の人が集まって、もう死骸は家に入れられてしまっていた。
 楯井さんは、悲しいというよりもどうしようというように、人々の中に入って行った。そして、一番先にいろんな巾《きれ》がかけられてある、死骸らしいものに眼がとまると、彼の瞳はそこからはなれようとしなかった。人は沢山集まっているけれども、かんじんの家のものが皆殺されてしまったので、どうするにも手出しが出来ない。殺された嫁さんの亭主は泊りがけで、遠い海岸の方に出かけたきり、三四日帰宅しないというし、余《あと》は
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