惨事のあと
素木しづ

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)楯井《たてい》夫婦が、

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)河|彼方《むこう》にある

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)まっか[#「まっか」に傍点]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ぼつ/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

      一

 楯井《たてい》夫婦が、ようやく未墾地開墾願の許可を得て、其処へ引移るとすぐ、堀立小屋を建てゝ子供と都合五人の家族が、落著いた。と間もなく此の家族が四ヶ月あまりも世話になっていた、遠い親類にあたる、その地では一寸した暮しをしていた山崎という農家の、若い嫁と生れて間もない子供と、子供を背負うてかけつけて来た子守女と、その家の老人と四人が惨殺されたという知らせをうけた。
 そこは、楯井夫婦が引移った未墾地から、約二里隔った天塩川の沿岸の、やはり新開地である。五六年後には、稚内《わっかない》へ通ずる汽車の工事が始まるというので、第一回目の測量がすむと、もう停車場が此所へ
次へ
全25ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
素木 しづ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング