様にあちこちと歩んでいる。
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アントオニオ (小声で。)恐ろしいものだな。臨終。言いようもない……。神に近いもの、先生……吃《ども》り吃り……何か訴えるように……。
チチアネルロ (戻って来ながら。)今はまた少し落ち着いて来られた。蒼《あお》いお顔から、後光がさしている。いやお画きになる、お画きになる。目付も穏かだ。むすめたちと何時《いつ》ものように話しておいでになる。
アントオニオ じゃ、僕たち、暫《しばら》く石段の上で横になっていよう。また容体がお変りになるまで、そうしていよう。
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人々|磴《いしだん》の上に蹲《うずくま》る。チチアネルロはジヤニイノの髪を弄《もてあそ》ぶ。その目半ば閉ず。
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バチスタ (半ばは自分に言うが如く。)段々悪く……それからいよいよいけなく……いやいや。そんな事はない。段々悪くなると云う容体。そんな容体がまるで終ってしまった後でなければ、いよいよいけないって時にはならない。ああ、この先の、生のない
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