よ風に陰深いさ枝を動かす樹々を眺めた。ラヴィニア、僕たちも同じ道を行かなけりゃならないのですね。ラヴィニア、僕ちょっとの間、眠ってたのです、あの階段のところで。そしてふと目を覚まして、耳に入れた第一の言葉は死というのでしたよ。
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身を顫わす。
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  ああ、あんな暗闇が空《そら》から下りて来る。
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ラヴィニア背を伸して立つ。眼差《まなざし》は明るい空の方に向けている。ジヤニイノ髪を繊手にて撫《な》でる。
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ラヴィニア 暗闇なんぞ見えないわ。蝶々の舞っているのが見えるばかりよ。星が光って来た。家の内では一人の老人が休息に行く。その最後の歩みにも少しの疲労がない。高らかに足音が響くわ。
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ラヴィニアかく言いて、家の入口の扉に背を向けていると、或る目に見えぬ手、帷幔を音無く、然《しか》し力烈しく側《かた》えに引く。皆々チチアネルロを先頭にして、音を立てず、息をこらして、階段を登りて、その方へ
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