李陵
中島敦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)漢《かん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)敵|匈奴《きょうど》の勢力圏
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)辺塞遮虜※[#「章+おおざと」、第3水準1−92−79]
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一
漢《かん》の武帝《ぶてい》の天漢《てんかん》二年秋九月、騎都尉《きとい》・李陵《りりょう》は歩卒五千を率い、辺塞遮虜※[#「章+おおざと」、第3水準1−92−79]《へんさいしゃりょしょう》を発して北へ向かった。阿爾泰《アルタイ》山脈の東南端が戈壁沙漠《ゴビさばく》に没せんとする辺の磽※[#「石+角」、第3水準1−89−6]《こうかく》たる丘陵地帯を縫って北行すること三十日。朔風《さくふう》は戎衣《じゅうい》を吹いて寒く、いかにも万里孤軍来たるの感が深い。漠北《ばくほく》・浚稽山《しゅんけいざん》の麓《ふもと》に至って軍はようやく止営した。すでに敵|匈奴《きょうど》の勢力圏に深く進み入っている
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