《しき》りに寵愛《ちょうあい》している小姓《こしょう》上りの渾良夫《こんりょうふ》なる美青年を使として、弟※[#「萠+りっとう」、第3水準1−91−14]※[#「耳+貴」、第4水準2−85−14]との間を往復させ、秘かに現衛侯|逐出《おいだ》しを企んでいる。

 子路が再び衛に戻《もど》ってみると、衛侯父子の争は更に激化《げきか》し、政変の機運の濃《こ》く漂《ただよ》っているのがどことなく感じられた。

 周の昭王の四十年|閏《うるう》十二月|某日《ぼうじつ》。夕方近くになって子路の家にあわただしく跳び込んで来た使があった。孔家の老・欒寧《らんねい》の所からである。「本日、前太子※[#「萠+りっとう」、第3水準1−91−14]※[#「耳+貴」、第4水準2−85−14]都に潜入。ただ今孔氏の宅に入り、伯姫・渾良夫と共に当主|孔※[#「りっしんべん+里」、第3水準1−84−49]《こうかい》を脅《おど》して己を衛侯に戴かしめた。大勢は既に動かし難い。自分(欒寧)は今から現衛侯を奉《ほう》じて魯に奔るところだ。後《あと》はよろしく頼む。」という口上である。
 いよいよ来たな、と子路は思った。
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