められてようやく一人を射斃《しゃへい》した。しかしすぐにまた弓を※[#「韋+長」、第4水準2−92−13]《かわぶくろ》に収めてしまった。再び促《うなが》されてまた弓を取出し、あと二人を斃《たお》したが、一人を射るごとに目を掩《おお》うた。さて三人を斃すと、「自分の今の身分ではこの位で充分反命するに足るだろう。」とて、車を返した。
この話を孔子が伝え聞き、「人を殺すの中、また礼あり。」と感心した。子路に言わせれば、しかし、こんなとんでもない[#「とんでもない」に傍点]話はない。殊に、「自分としては三人斃した位で充分だ。」などという言葉の中に、彼の大嫌いな・一身の行動を国家の休戚より上に置く[#「一身の行動を国家の休戚より上に置く」に傍点]考え方が余りにハッキリしているので、腹が立つのである。彼は怫然《ふつぜん》として孔子に喰って掛かる。「人臣の節、君の大事に当りては、ただ力の及ぶ所を尽くし、死して而《しこう》して後に已《や》む。夫子何ぞ彼を善しとする?」孔子もさすがにこれには一言も無い。笑いながら答える。「然《しか》り。汝の言のごとし。吾《われ》、ただその、人を殺すに忍《しの》びざる
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