込んだかと思うと、忽《たちま》ち、あやまり無き速さを以て、命ぜられた品と数量とを拾い上げ、サッと、それを又、別の離れた場所へ綺麗に積上げる。その巧みさ! 麦畑にあさる鳥の群を見る如し。
 突然、紫の腰布を着けた壮漢が九十人ばかり現れて、我々の前に立停った。と思うと、彼等の手から、それぞれ空中高く、生きた稚※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]《わかどり》が力一杯投上げられた。百羽に近い※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]が羽をばたつかせながら落ちて来ると、それを受取って、又、空へ投げ返す。それが、幾度も繰返される。騒音、歓声、※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]の悲鳴。振廻し、振上げられる逞《たくま》しい銅色の腕、腕、腕、…………観ものとしては如何にも面白いが、しかし一体何羽の※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]が死んだことだろう!
 家の中でマターファと用談を済ませてから、水辺へ下りて行くと、既に貰い物の食物は舟に積込まれてあった。乗ろうとすると、スコール襲来、再び家に戻り、半時間休んでから、五時出発、またボートとカヌーとに分乗。水の上に夜が落ち、岸の灯が美しい
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