、だから、他人の眼には如何に奇怪にうつろうとも、氏自らにとっては、他の何物をもっても之にかえることのできない、唯一無二の表現術なのである。かかる作者自身の感情や感覚の裏打ちがあればこそ、氏の文章は、かくも人をひきつけるのである。単なる、きまぐれ[#「きまぐれ」に傍点]や思いつき[#「思いつき」に傍点]だけであったなら、三十年の長い年月の間に必ずや、化の皮を現わしたことに違いないと、私は考えるのである。
[#地から2字上げ](昭和八年七月発行、「学苑」第一号)



底本:「中島敦全集 3」ちくま文庫、筑摩書房
   1993(平成5)年5月24日第1刷発行
   2003(平成15)年3月20日第5刷発行
入力:門田裕志
校正:多羅尾伴内
2003年7月6日作成
青空文庫作成ファイル:
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