盈虚
中島敦

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)衛《えい》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)当時|范《はん》氏

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「萠+りっとう」、第3水準1−91−14]※[#「耳+貴」、第4水準2−85−14]《かいがい》
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 衛《えい》の霊公の三十九年と云う年の秋に、太子|※[#「萠+りっとう」、第3水準1−91−14]※[#「耳+貴」、第4水準2−85−14]《かいがい》が父の命を受けて斉《せい》に使したことがある。途《みち》に宋の国を過ぎた時、畑に耕す農夫共が妙な唄を歌うのを聞いた。
[#ここから3字下げ]
既定爾婁豬
盍帰吾艾※[#「豕+暇のつくり」、第4水準2−89−3]
[#ここから11字下げ]
牝豚はたしかに遣った故
早く牡豚を返すべし
[#ここで字下げ終わり]
 衛の太子は之《これ》を聞くと顔色を変えた。思い当ることがあったのである。
 父・霊公の夫人(といっても太子の母ではない)南
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