は相違なきも主として気圧薄弱の然《しか》らしむる所ならんか、暫《しばら》く疑《うたがい》を存す、もし予にして羸弱《るいじゃく》にして、体育の素養なからんには、人事不省に陥《おちい》りたる後ち、再び起つこと能わざりしならんにと、下山後医師の言を耳にしたることもありたれども、要するに予が幸に今日あるを得たるは、偏《ひと》えに有志者の特別の援助を与えられたるに依《よ》る。
 予はかくの如く、しばしば思わざる逆境に臨《のぞ》みし代りに、再挙の計画に就きては、経験を得たること鮮少ならず。特に先ず須要《しゅよう》にして急務となすものは、観測所改造の挙に在《あ》り、これをして完全ならしめざれば常に天候に妨げられ、到底力を目的の業務に専《もっぱ》らにすること能わず、随て満足なる観測の結果を得んこと望むべからず、故に完全なる家屋改造のことは、実にこの事業の根底なりとす、然るに先年は諸事完備を欠くこと多かりしにもかかわらず、寒中殆んどその半ば滞在し得たるのみならず、図らずも婦女子の弱体すらなおこれに堪《た》え得たる有様なるを以て、今《いま》もし前途の施設を完備せんには、常住観測の決して至難の業にあらざるは
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