ことを言うかわりに、アグリッパの原理はすっかり陳腐になっていて、今では、古いものよりずっと大きな力のある近代的な科学体系が採り入れられている、というのは、昔の科学の力がふわふわして捉えどころがないのに対して、近代のは真理にかなっていて実際的であるからだ、ということを説明するだけの労を取ってくれたとしたら、ああいう事情のもとにあったのだから、私はきっとアグリッパをわきへ投げ棄て、もっともっと熱心に前からの研究に戻って、私の想像力を昂奮したままで満足させたことだろう。私の一連の考えが、自分を破滅にみちびいた致命的な刺戟を受けるということさえ、なかったかもしれない。しかし、父は私の本をちょっと眺めたばかりだったので、父がその内容をよく知っているとはうなずけなかった。そこで私は、それをむさぼるように読みつづけた。
家に帰ってからの私の最初の用事は、この著者の全著作と、そのあとでパラケルスス([#ここから割り注]一四九三―一五四一、スイスの医師、化学者[#ここで割り注終わり])とアルベルツス・マグヌス([#ここから割り注]一二〇六―八〇、トマスの師、ケルン大学に教えた科学的な博学者[#ここで割
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