た。百姓夫妻はそのかわいらしいみなし児が好きだった。その子の居ることが、この人たちにはしあわせとおもわれていたが、神さまがこういう有力な保護者を与えてくださったのに、貧乏と窮乏のなかにこの子をとどめておくのは、よくないことだ、と考えなおした。そこで、村の牧師に相談して、その結果、エリザベート・ラヴェンザは、私の親の家の寄寓者――私の妹以上のもの――、あらゆる私の仕事、私の喜びの、美しくて慕わしい伴侶となった。
誰でもエリザベートを愛した。みんな、熱情的な、ほとんど尊敬に近い愛着でもってエリザベートを見たが、自分も同じ眼でそれを見ると、誇りと喜びとを感じた。エリザベートが家へ件れて来られる前の晩に、母が私に冗談を言った、――「ヴィクトルにあげるきれいな贈りものがあるの。――明日になったらあげますよ。」そして翌日になって、母が約束の贈りものとしでエリザベートを私に会わせたとき、私は、子どもらしくまじめに、母のことばを文字どおりに解釈し、エリザベートを私のもの――自分が護り、愛し、かつ大事にすべき私のものと考えた。エリザベートに与えられるあらゆる賞讃を、自分の持ちものに与えられた賞讃として
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