に燃えていたのだが、わたしはひとりぼっち、みじめなひとりぼっちじゃありませんか。わたしを造ったあんたがわたしを嫌っているのだもの。わたしに関わりのないあんたの仲間の人間たちに、どんな望みがもてるんです? そいつらはわたしを斥け、憎んでいる。無人の山やうらさびしい氷河が、わたしの隠れ家ですよ。わたしは幾日もここをぶらついていますが、氷の洞穴だけが、わたしの安心しておられる住まいで、人間が嫌がらずにおいてくれるのはこれきりですよ。この吹きさらしの空は、大歓びでわたしを迎えてくれますよ。あんたの仲間の人間より親切だからね。人間どもときたら、わたしの居ることがわかると、あんたがやったように、わたしをやっつけようと武装するのだ。それなのに、わたしを嫌っているそいつらを憎んじゃいけないのかね。敵と仲よくするなんて、いやなことだ。わたしは不幸だから、このみじめさをそいつにも分けてやるのだ。けれども、わたしに埋め合せをしてくれて、そいつらからこの災難をなくする力が、あんたにはあるのですよ。この災難は、あんたの心一つで大きくなって、あんたの家族ばかりでなくそのほかの数限りない人間まで、その猛裂な渦巻に捲
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