よだつような、いなそれ以上の、筆舌に尽しがたい災害の行為を犯して(と私は思い込むんでいた)、まだ隠れているからだ。けれども私の心にも、親切と徳を愛する心が溢れた。私はまず第一に慈悲深くするつもりで生活し、それを実行に移して自分の同胞のためにやくだつ時を渇望していたのだった。今となっては、すべてが水泡に帰してしまった。みずから満ち足りて過去をふりかえり、そこから新しい希望のみこみを立てる、あの良心の清らかさのかわりに、言語に絶する激しい苦痛の地獄へと私を駆り立てる悔恨と罪悪感に捉われたのだ。
こんな精神状態が私の健康をむしばみ、たぶん、それが最初に受けた衝動からすっかり立ちなおるということはなかった。私は人の顔を避け、歓びや満足のあらゆる声に苦しめられた。孤独がたった一つの慰めだった――深い、暗い、死のような孤独が。
父は、私の気性や習癖の眼に見える変化に苦しみ、自分の清らかな良心と罪を知らぬ生活の感情から引き出した議論で、がまん強く私を元気づけ、覆いかかった黒雲を払いのける勇気を出させるように努力した。「ヴィクトルや、わたしだってやはり悩んでいるとは思わないかね。わたしがおまえの弟
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