ろうか。私は、自分の地位の怖ろしさに堪えかね、公衆の声や裁判官の顔が、運のわるい犠牲者を有罪と決めてかかっているのを見ると、苦悶のあまり法廷から跳び出した。被告の苦しみも、私の苦しみとは比べものにならない。被告は自分に罪がないことで支えられたが、苛責の牙が私の胸を引き裂き、ずたずたにしてもなお、あきたりないのだ。
 私はどうにもならないみじめな一夜を送った。朝になって法廷へ行った時には、唇や喉がからからに渇いた。私は、思いきって致命的な質問をすることはできなかったが、役人は私を知っていて、私が訪問したわけを察した。投票は済んだのだが、それはみな黒で、ジュスチーヌは有罪と決まったのであった。
 私がそのときどう感じたかを述べる勇気はない。私は前に恐怖の感情を経験し、それを適切に言い表わそうと努力してきたが、私がこのときがまんした悲痛な絶望の思いを伝えることのできることばはなかった。私が話しかけた人は、ジュスチーヌがもう罪状を自白したと言い足した。「こんなわかりきった事件には、ああいう証言もあまり要らなかったのですがね、」とその人は言った、「けれども、わたしは、あれには喜びましたよ。いや、
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