うな悪い人は、たしかに誰ひとりとしてこざいません。殺害者がそこに入れたのでしょうか。私はそんなことをする機会を与えたおぼえもありませんし、かりに与えたとしても、その人はどうして宝石を盗みながら、すぐまたそれを手離したのでしょうか。
「私は、その理由を判事さまがたの公平にお任せしますが、それでも希望のもてそうな余地は見えません。私の人柄については、二、三の証人をお調べくださるようにお願いいたします。もしも、その証人の証言で私の嫌疑が晴れないようでしたら、私は自分の潔白を誓言いたしますけれど、有罪の宣言を受けなくてはなりません。」
多年ジュスチーヌを知っている数人の証人が呼ばれ、有利な話をしたが、ジュスチーヌが犯したと考えている犯罪を怖れかつ憎んでいるために、みな憶病になって進んで立つのを喜ばなかった。エリザベートは、この最後の頼みの綱、すなわちジュスチーヌのすぐれた気性、非の打ちどころのないふるまいが明らかになってさえも被告がいま罪に陥ろうとしているのを看て取って、ひどく取り乱しながらではあるが、証言に立つ許しを乞うた。
「私は、殺された子の不幸な従姉、というよりは姉でこざいます。と申
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