百姓家の納屋のなかで数時間を過ごした。その夜はほとんど、そこでまんじりともしないでいたが、明けがたになって、どうやらほんのちょっとばかり眠ったらしく、人の足音で眼がさめた。夜が明けたので、もう一度子どもを捜してみようとおもって、その納屋を出た。子どもの死体のよこたわっていた地点の近くへ行ったとしても、それは何も知らないでしたことであった。市場の女の人に訊かれたときうろたえたのは、驚くに当らない。というのは、自分は一晩じゅう眠らないで過ごしたのだし、かわいそうなウィリアムがどうなったかもまだはっきりわからなかったのだ。画像のことについては、なんとも言いようがない。
きのどくな被告は話を続けた、「この一つのことが、私にとってどんなに致命的に不利であるかはぞんじておりますが、それを説明する力は私にはありません。自分の身にいささかもおぼえがないと申しあげるとしたら、私は、それがポケットに入っていたことについて、いろいろとありそうなばあいを臆測するにとどめるだけなのです。しかし、そこでも行きづまってしまいます。私は、この地上に、一人の敵ももっていないと信じていますので、私をむやみに破滅させるよ
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