甲高い声をあげながら、爆発する火山のように、顔がとつぜん荒々しい怒りの表情に変ることもありました。
この人の話は、前後に脈絡があって、すこしも飾りけのない真実のように見えました。しかも、この人が見せてくれたフェリクスとサフィーの手紙や、僕の船から見えたその怪物の出現が、この人が本気で筋みちを立てて断言した以上に、その話がほんとうであることを確信させるものとぞんじます。それなら、そういう怪物がほんとうに存在したのか! 僕はそれを疑うことはできませんが、それでもすっかり度肝を抜かれて茫然としています。僕は、ときおり、フランケンシュタインからその生きものをどうして造ったかを詳しく聞き出そうとしましたが、この点になると頑としてゆずりませんでした。
「あなたは気でも狂ったのですか。」とその人は言いました、「それとも、無意味な好奇心でお訊きになるのですか。まあ、まあ、おちつきなさい! 私の不幸がよ
い手本ですよ。不幸をわざと大きくなさってはいけません。」
フランケンシュタインは、僕がこの話を書き取っているのを見て、それを見せてほしいと言いだし、ところどころ自分で手を入れたり附け加えたりしたが、それはおもに、自分が敵と交した会話に生命と活気を与えるためであった。そして言った、「私の話を保存なさるからには、まちがったものを後世に伝えたくはありませんからね。」
こうして、想像もつかぬ奇怪な物語を聞いているうちに、一週間ほど経ちました。僕の考えること、またすべて魂に感じることは、この客人に対する興味に吸い取られてしまいましたが、それは、この話と、この人のもっている高められたやさしい態度から来たものでした。慰めてやりたいとはおもいますが、このようにどこまでも悲惨で、どんなことをしても慰められそうもない人に、いくら勧告したところで、生きるようにさせることができるでしょうか。どうしてどうして! この人がいま知ることのできるたった一つの喜びといえば、その打ち砕かれた精神が死の平和へとおちつく時なのでしょう。けれども、この人は、孤独と精神錯乱から出てくる一つの楽しみを味わってもいるのです。夢のなかで親しい者と話をつづけ、そういう交りによって自分の不幸を慰められたり、復仇の念をかきたてられたりすると、それは、自分の幻想から生れたものでなく、幽界からはるばると自分を訪ねて来た人たちだと思いこむ
前へ
次へ
全197ページ中183ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宍戸 儀一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング