これはむちゃくちゃでみじめな考えだったが、永遠にまたたく星の光がどんなに重たくのしかかり、焼きつくすように吹いてくるどんよりしたいやな熱風のような風の吹くたびに、その音をどんな思いで聞いたかは、とてもお話できそうもない。
 シャムニの村に着かないうちに夜が明けたので、私は休息もしないでまっすぐジュネーヴへ帰った。私は、自分の心のなかでさえ、私の気もちを言い表わすことができなかった、――それは山のような重さでのしかかり、私は下敷きにされて、あまりの苦しさにむちゅうになった。こんなふうにして私は、家に帰り、中に入って家の者の前に現われた。やつれはてて気ちがいじみた私の姿に、みなひどくびっくりしたが、私は何を聞かれても返事をせず、ほとんど口をきかなかった。私は、禁令のもとに置かれているような――みんなの同情を受ける権利がないような――もうみんなと仲よくできないような気がした。それでも私は、みんなを敬慕に近いくらいにさえ愛し、この人たちを救うために、自分のいちばんいやな仕事に身を捧げる決心をした。そういうことに没頭することを考えると、ほかのことはみな夢のように眼の前を過ぎ去り、そういう考えだけが生活の現実となった。


     18[#「18」は縦中横] イギリスへの旅立ち


 ジュネーヴへ帰ってから幾日も幾週間も経ったが、仕事にかかる元気は湧いてこなかった。望みを失った悪鬼の仕返しを恐れはしたものの、私は、言いつけられた仕事をするのはいやでたまらなかった。ふたたび深遠な研究とほねのおれる探求に数箇月を費さなければ、女性を造り出せないことがわかっていた。イギリスのある哲学者が何か発見をした話を開き、それを知ることは私が成功するためには必要なことだったので、そのためにイギリスへ行くのに父の同意を得たいと考えることもあったが、あらゆる口実をもうけてぐずぐずし、その仕事がぜひともすぐやらなければないわけでもなさそうな気がしはじめて、その第一歩を踏み出すことを尻込みした。私の身にはたしかに変化が起っていた。というのは、今まで衰えていた健康がだいぶ恢復し、不幸な約束を思い出すことで妨げられない[#「妨げられない」は底本では「妨げげられない」]かぎりは、それに応じて元気も出てきた。父はこの変化を見て喜び、私の憂欝のなごりを根絶するいちばんよい方法について考えた。私のこの憂欝は
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