はずれに出にが、その森のへりに流れの速い深い川があって、いろいろの木がその上に枝を垂れ、今やいきいきとした春の芽をつけていた。ここでわたしは、どの道を行ったらよいか、よくわからなかったので、立ちどまったが、そのとき人声がしたので、糸杉のかげに身を隠した。わたしが隠れるか隠れないうちに、若い娘が誰かのところから戯れて逃げたのか、わたしの隠れているところに笑いながら走って来た。それから続けて川の岸の崖になったほうに行ったが、そのときとつぜん足をすべらして急流のなかに落ちこんだ。わたしは隠れていたところから跳び出し、やっとこさで強い流れのなかからその娘を助け、岸へ引き上げた。娘は気を失っていたので、息を吹き返させるために、自分の力でできるだけのことをしてやったが、そのとき、とつぜん、この娘と戯れていたらしい一人の百姓男が近づいてきたので、それが遮られた。その男は、わたしを見ると跳んで来て、わたしの腕から娘を引き離し、森のもっと奥のほうへ駈けていった。なぜということもなく、わたしは急いでそのあとを追ったが、その男はわたしが近づくのを見て、手に持っていた鉄砲で、わたしの体に狙いを定めて発砲した。わたしが地面に倒れると、その加害者は、もっと足速に森のなかへ逃げていった。
「さて、これが、わたしの慈悲心の報いだった! 一人の人問を死から救い、その報酬として今、肉と骨とを砕いた傷のみじめな苦痛に悶えるのだ。つい先ほど抱いていた親切なやさしい気もちは、悪鬼のような激怒と歯ぎしりに変った。苦痛に煽られて、あらゆる人間に対する永遠の憎悪と復讐を誓ったが、傷の痛みに堪えかね、脈搏がとまってわたしは気絶してしまった。
「わたしは、受けた傷を治すことに努めながら、何週間も森のなかてみじめな暮らしをつづけた。弾は肩に入って、まだそこに残っているのか、それとも突き抜けたのか、わからなかったか、とにかくそれを抜き取る手段はなかった。わたしの苦悶はまた、こんなふうに危害を加えたことの不正や忘恩に対するがまんのならぬ気もちのために、いっそう強められた。わたしの毎日の誓いは、復讐――わたしが受けた凌辱と苦痛だけを償うような、深刻な、死のような復讐であった。
「数週間の後に傷が治って、わたしは旅を続けた。わたしの堪えてきた旅の労苦は、もはや輝しい太陽や春のそよ風では楽にならなかった。喜びはみな偽りでしかなか
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