ナはない。だが何ものをも命ぜず、何ものをもすすめず、ただ観察し説明するに止まる科学にあっては、そうではない。科学はいかなる意味においても実践と衝突することが出来ない。」
一二 コックランは政策と科学とをかく区別した後、それら各々の職分と重要さとを指摘している。彼はいう、「科学的真理が一度よく認識せられ、導き出されたとき、人間の事業の経営に適用せられるべき規則を、これらから導き出そうとするのに対して、私共は不平でもなければ、またこの企《くわだて》を奇妙だとも思わない。科学的真理が何らの役にも立たぬのは、よいことではない。これらを利用する唯一の方法は、これらから政策を演繹することにある。既にいったように、科学と政策との間には密接な親族関係がある。科学は政策に光明を与え、政策の方法を正しからしめ、その行手を照し指示する。科学の援助が無ければ、政策は一歩ごとに躓《つまづ》きながら跚《よろめ》き歩むことしか出来ない。他方、科学が発見した真理を価値あらしめるものも政策であって、この政策が無ければ、科学の真理も無益である。また科学的研究の主な動機はほとんど常に政策である。人が、知るための興味のみで
前へ
次へ
全572ページ中69ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ワルラス マリー・エスプリ・レオン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング