と呼び、二交換者を(1)、(2)と呼ぶ。r=φa,1[#「a,1」は下付き小文字](q), r=φb,1[#「b,1」は下付き小文字](q) をそれぞれ交換者(1)に対する(A)、(B)の利用曲線の方程式とし、r=φa,2[#「a,2」は下付き小文字](q), r=φb,2[#「b,2」は下付き小文字](q) をそれぞれ交換者(2)に対する(A)、(B)の利用曲線であるとする。qa[#「a」は下付き小文字] を交換者(1)によって所有せられる(A)の量とし、qb[#「b」は下付き小文字] を交換者(2)によって所有せられる(B)の量とし da[#「a」は下付き小文字], db[#「b」は下付き小文字] をそれぞれ交換せられる(A)、(B)の量とする。この条件において、ゴッセンの表現は二つの方程式
[#ここから4字下げ]
φa,1[#「a,1」は下付き小文字](qa[#「a」は下付き小文字]−da[#「a」は下付き小文字])=φa,2[#「a,2」は下付き小文字](da[#「a」は下付き小文字])
φa,2[#「a,2」は下付き小文字](db[#「b」は下付き小文字])=φb,2[#「b,2」は下付き小文字](qb[#「b」は下付き小文字]−db[#「b」は下付き小文字])
[#ここで字下げ終わり]
によって飜訳せられ、これらが交換者(1)、(2)に対する da[#「a」は下付き小文字], db[#「b」は下付き小文字] を決定する。だがかくして得られる利用の最大は、自由競争を条件とする最大でないことは明らかである。すなわちそれは、すべての交換者が共通で同一の比例で自由に二商品を互に与えまたは受ける条件と相容れる所の最大ではないことはいうまでもない。それは、市場において価格は常に一つであるとの条件、及びこの価格において有効需要と有効供給との均衡があるとの条件を考量しない絶対的最大であり、従って所有権の存在を考えない絶対的最大である(二)[#「(二)」は行右小書き]。
 一六三 ジェヴォンスは次のように交換方程式を立てている。――二商品の交換比率は[#「二商品の交換比率は」に傍点]、交換後において消費せられるこれら商品の量の最終利用の反比に等しい[#「交換後において消費せられるこれら商品の量の最終利用の反比に等しい」に傍点](前掲書第二版一〇三頁参照)。そして二商品を(A)、(B)とし、二人の交換者を(1)、(2)とし、φ1[#「1」は下付き小文字], ψ1[#「1」は下付き小文字] でそれぞれ交換者(1)に対する(A)及び(B)の利用函数を示し、φ2[#「2」は下付き小文字], ψ2[#「2」は下付き小文字] でそれぞれ交換者(2)に対する(A)及び(B)の利用函数を表わし、a を交換者(1)が所有する(A)の量とし、b を交換者(2)が所有する(B)の量とし、x, y それぞれ交換せられる(A)、(B)の量とすれば、ジェヴォンスは自ら右の命題を飜訳して次の二つの方程式としている。
[#ここから4字下げ]
[#式(fig45210_124.png)入る]
[#ここで字下げ終わり]
これを私の記号で表せば、
[#ここから4字下げ]
[#式(fig45210_125.png)入る]
[#ここで字下げ終わり]
となり、これにより da[#「a」は下付き小文字] と db[#「b」は下付き小文字] とを決定し得る。この式は私の式と二つの点において異る。第一に、価格は商品の交換せられた量の反比であるが、この概念の代りにジェヴォンスは、交換量の正比でありかつ常に da[#「a」は下付き小文字], db[#「b」は下付き小文字] の二項によって与えられる交換比(〔raison d'e'change〕)という概念を用いている。第二に、ジェヴォンスは二人の交換者の場合をもってすべて問題は解けると考えている。氏は、これらの交換者の各々(取引主体)を、個々人の集団、例えば大陸の全住民、与えられた国における同じ種類の産業に従事する者の集団と考える権利を保留している(九五頁参照)。しかし氏は、このような仮定は現実を離れて、仮設的な平均を考えたものであることを、自ら認めている(九七頁)。私は現実に即しようとするが故に、ジェヴォンスの方式は、ただ二人の人のみが現われる限られた場合に妥当であるとしか、考えない。この場合には、ジェヴォンスの方式は、交換量を価格という概念に代えれば、私の方式と等しくなる。だから、任意数の人がいて、まず互に二商品を、次に任意数の商品を交換しようとする一般的な場合を導き入れるべき仕事が未だ残されていた。これは、ジェヴォンスが価格を問題の未知数としないで、交換せられる量を未知数とするような不適切な思想をもっていたことによるのである。
 一
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