価格を超えるかに従い、その生産をあるいは拡張し、あるいは縮小する。
一度収入の率が得られると、ただに新固定資本の価格のみでなく、また旧固定資本すなわち既に存在する土地、人的能力、狭義の資本の価格が得られる。これは旧資本の用役の価格である地代、賃銀、利子をこの率で除すことによって得られる。残るのは流動資本の価格を見出すことと、価値尺度財が貨幣である場合にこれらすべての価格がいかなるものとなるかを知ることとだけである。これらは流通及び貨幣の問題である。
読者はこの第四版において私が「所望の現金」の考察により、いかにして静学的観点を離れることなく、先の問題を取扱ったと同じ条件と方法とをもって、右の問題を提出し、解決することが出来たかを見ることが出来よう。この問題の提出と解決のためには、流動資本を物または貨幣の形態をとる所の予備(approvisionnement)の用役を果すものと考え、かつこれらの用役を、資本家によってのみ供給せられ、地主、労働者、資本家によっては消費的用役として需要せられ、企業者によっては、予備の用役で表わした製造係数の割合に従って、生産的用役として需要せられると考えれば足る。かくてこれら予備の用役の市場価格は狭義の用役の市場価格の如くにして決定せられる。そして流動資本及び貨幣の価格もまた予備の用役の価格の純収入率に対する比として生ずるのであって、貨幣の価格は、貨幣が貨幣である限り、その量の反比例函数として成立する。
ところでこの全理論は数学的理論である。語を換えていえばその説明が通常の語でなされ得るとしても、その証明は数学的になされねばならぬ。それは全く交換理論の基礎の上に立つのであり、交換理論はすべて市場の均衡状態における二つの事実に約言される。まず交換者が利用の最大を得る事実、次にすべての交換者が需要する各商品の量と供給する量とは相等しいとの事実に要約される。ところでひとり数学によってのみ我々は利用の最大の条件を知ることが出来るのである。我々は数学によって、各交換者につき、各消費の目的物または消費的用役に対し、それらの充《みた》された最後の欲望の強度または稀少性をそれらの消費量の減少函数として表わす方程式または曲線を作ることが出来、また数学によって各交換者がその欲望の最大満足を得られるのは、ある叫ばれた価格において、交換後における各商品の稀少性がそれらの価格に比例するように、これらの商品の量を需要し供給するときであることを知ることが出来る。ただに交換においてのみでなくまた生産、資本化、流通においても、何故《なにゆえ》にかついかにして我々は需要が供給に超過する用役、生産物、新資本の価格を騰貴せしめ、供給が需要に超過するそれらの価格を下落せしめて、均衡の市場価格を得るのであるか。ひとり数学のみがこれを教え得るのである。これを教えるに数学は、まず稀少性の函数、欲望の最大満足を目的とする用役の供給を表わす函数、用役、生産物、新資本の需要と供給との均等を表わす方程式を導き出す。次にこれらの方程式を、生産費及び新資本の販売価格と生産費との均等を表わし、またすべての新資本の収入率の均等を表わす所の他の方程式に結び付ける。最後に数学は、(一)かようにして提出された交換、生産、資本化、流通の問題は不能の問題でないことすなわち未知数にまさに等しい数の方程式を与える問題であること、(二)市場における価格の騰貴下落の機構は、企業者が損失のある企業から利益のある企業へ転向するという事実と相結合して、これらの問題の方程式を摸索によって解く方法に他ならないことを教える。
右のようなシステムについて、本書において出来る限り入念で詳細な説明を与えようと思う。しかし私はこれを既に一八七三年から一八七六年に亙って「社会的富の数学的理論」(〔The'orie mathe'matique de la richesse sociale〕)の初めの四章に解説し、また一八七四年と一八七七年とに純粋経済学理論の第一版に解説し、証明した。私はこの全理論の原理を得るや否や、これをパリーの精神科学及び政治学学士院に報告するのを私の義務と感じた。そこで右に挙げた四論文の第一を草《そう》し、二商品相互の交換の場合につき、各交換者の欲望の最大満足の問題の解法を、充された最後の欲望の強度が交換価値に比例せねばならぬことによって示し、かつまた二商品のそれぞれの市場価格の決定の問題の解法を、需要が供給に超過する場合には騰貴により、供給が需要に超過する場合には下落によって与えた。だが学士院がこの報告を受けるに当って示した態度は私に快いものでもなければ、私の勇気を増すようなものでもなかった。むしろ私はこの学者の団体に対しては憤慨を禁じ得ないのである。あえていうが、学士院は
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