banques〕)の著者でまた「経済学辞典」(〔Dictionnaire d'e'conomie politique〕)の執筆者中最も活動的なかつ尊敬すべき人の一人であったシャール・コックラン(Charles Coquelin)は、この辞典のうち経済学(〔E'conomie politique〕)と題する項において、経済学の定義は未だに完成していないといった。この主張を助けるために彼は、私が既に述べたスミス、セイの定義やシスモンジ、ストルク(Storch)、ロッシ(Rossi)らの定義を示し、それらのいずれも他を排して採らねばならぬほど際立って優れていないと断言し、かつまたこれらの人は自分の著書において自分の定義に従っていないといっている。次に彼は、経済学を定義しようとする者はまずそれが科学であるか、または政策であるか、あるいはそれらの両者であるかを問うべきであり、ことに政策と科学との区別を明らかにすべきであると注意している。これはまことに明敏な注意である。この点について彼が述べている考察は目立って正しく、かつ問題は常に同じ点にあるのであるから、我々はそれを繰り返すほかはない。彼はいう、「政策は従われるべき命令または規則から成り立っている。科学は、ある現象または観察せられたまたは明らかにせられた関係の知識から成立する。政策は忠告を与え、命令し、指導する。科学は観察し記述し、説明する。天文学者が天体の運行を観察し記述するときには、科学を研究している。しかし一度この観察が終了すれば、天文学者は、航海に応用せられる規則を導き出すであろうが、この場合には政策を研究している……かように現実の現象を観察し記述する所に科学がある。命令を下し、規則を規定する所に政策がある。」
 一一 著者はなお註として一つの注意を与えているが、これは科学と政策との区別を完成したもので、ここに引用する価値がある。彼はいう、「我々が科学と政策との間に立てる真の区別は、人々が理論と実践との間になす区別とは何ら共通なものはない。政策の理論もあれば科学の理論もある。そして実践と矛盾することがあり得るであろうといい得るのは、政策の理論についてだけである。政策は規則を命令するが、しかしこれらの規則は一般的である。従ってこれらの命令は、たとい正しいものであっても、ある特別な場合に実践と調和し得ないと考えても不合理
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