少性がそれらの価格に比例するように、これらの商品の量を需要し供給するときであることを知ることが出来る。ただに交換においてのみでなくまた生産、資本化、流通においても、何故《なにゆえ》にかついかにして我々は需要が供給に超過する用役、生産物、新資本の価格を騰貴せしめ、供給が需要に超過するそれらの価格を下落せしめて、均衡の市場価格を得るのであるか。ひとり数学のみがこれを教え得るのである。これを教えるに数学は、まず稀少性の函数、欲望の最大満足を目的とする用役の供給を表わす函数、用役、生産物、新資本の需要と供給との均等を表わす方程式を導き出す。次にこれらの方程式を、生産費及び新資本の販売価格と生産費との均等を表わし、またすべての新資本の収入率の均等を表わす所の他の方程式に結び付ける。最後に数学は、(一)かようにして提出された交換、生産、資本化、流通の問題は不能の問題でないことすなわち未知数にまさに等しい数の方程式を与える問題であること、(二)市場における価格の騰貴下落の機構は、企業者が損失のある企業から利益のある企業へ転向するという事実と相結合して、これらの問題の方程式を摸索によって解く方法に他ならないことを教える。
 右のようなシステムについて、本書において出来る限り入念で詳細な説明を与えようと思う。しかし私はこれを既に一八七三年から一八七六年に亙って「社会的富の数学的理論」(〔The'orie mathe'matique de la richesse sociale〕)の初めの四章に解説し、また一八七四年と一八七七年とに純粋経済学理論の第一版に解説し、証明した。私はこの全理論の原理を得るや否や、これをパリーの精神科学及び政治学学士院に報告するのを私の義務と感じた。そこで右に挙げた四論文の第一を草《そう》し、二商品相互の交換の場合につき、各交換者の欲望の最大満足の問題の解法を、充された最後の欲望の強度が交換価値に比例せねばならぬことによって示し、かつまた二商品のそれぞれの市場価格の決定の問題の解法を、需要が供給に超過する場合には騰貴により、供給が需要に超過する場合には下落によって与えた。だが学士院がこの報告を受けるに当って示した態度は私に快いものでもなければ、私の勇気を増すようなものでもなかった。むしろ私はこの学者の団体に対しては憤慨を禁じ得ないのである。あえていうが、学士院は
前へ 次へ
全286ページ中18ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
手塚 寿郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング