ノ私共三人とは独立に、ウィーン大学の経済学教授カール・メンガーによってもまた認められ、立証せられているのである。
 私は、ゴッセンが利用曲線についての先駆者であるのを認め、またジェヴォンスが交換における最大利用の方程式についての先駆者であるのを認める。だが私はこれらの思想を借用したのではない。私は私の経済学説の根本原理を父オーギュスト・ワルラス(Auguste Walras)から借用し、この学説の解説のために函数計算を用いる根本原理をクールノーから借用したのである。これらのことを私は最初の論文で明言し、またそれ以後のあらゆる機会に明言している。今ここでは、この学説が本書の各版で順次にいかに正確さを加えられ、展開せられ、補充せられたかを説明しようと思う。
 私は交換方程式、生産方程式、資本化及び信用方程式の解法に、その全体についてはほぼ元のままとしながら、いくつかの細かい部分について修正を加えた。
 交換に関しては諸商品の最大利用の定理(六)[#「(六)」は行右小書き]の基礎的証明のほかに、次の二つの証明を加えた。
(一)利用曲線が連続な場合につき、微分学の通常の記号法による証明――この証明は後に新資本の最大利用の定理を証明するに必要である。(二)利用曲線が不連続な場合の証明。
 生産に関しては、均衡の成立のための予備的摸索を仮定し、かつこの運動は有効になされるのではなく、取引証書によって(sur bons)なされると仮定した。そして私はこの仮定をそれ以後においても維持した。
 資本化については、交換方程式と最大満足の方程式とから、貯蓄の函数を理論的に演繹し、これを経験的に導き出すことを避けた。そして、純収入率の均等もまた新資本から得られる利用の最大の条件であることを、新定理として証明した。第一版を公にときには、私は新資本用役の最大利用に関する二つの問題のただ一つしか認めることが出来なかった。詳言すれば、ある個人がその収入を種々の欲望の間に配分するに当り資本の量をその当然の性質によって与えられていると考えまたは偶然に決定せられていると想像するときに起る問題、すなわち私が諸商品の最大利用の問題と呼び、数学的には資本用役の稀少性がその価格に比例せねばならぬことによって解かれる問題しか、第一版では私は考えていなかった。しかるに第二版を準備していたとき、なお一つの問題があるの
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